中国・ミャンマー石油・天然ガスパイプラインは、雲貴高原のカルスト地形や多数の天然湖沼、貯水池などの環境保全水域を通過します。これらのエリアでは、極めて複雑な地質・水文条件と厳格な環境保護基準への適合が求められます。布の柔軟性とコンクリートの剛性を併せ持つ新規複合材料コンクリートキャンバス(敷設型コンクリート複合マット)は、複雑な水網地域や管路横断部において優れた工学的効果を発揮しています。
パイプラインの中国国内区間(雲南省・貴州省など)は高低差が激しく水系が密に発達しており、湖沼の支流、遊水地、湿地帯の横断を余儀なくされます。管路の入水部、湖岸遷移区間、および浅水湿地部における従来の水工保護工法には、以下の課題がありました。
現場打ちコンクリート打設の制限: 水中および水際湿地において、従来の生コンクリート打設には仮締切工や型枠工事、長期の養生期間が必要です。また、急勾配の法面や軟弱地盤には大型アジテータ車の進入が困難でした。
洗掘および空洞化(パイピング)のリスク: 雨季の水位変動や波浪の衝撃、水流の乱流により、管溝の埋戻し土が侵食されやすく、配管の露出や洗掘による浮き上がりが懸念されていました。
環境負荷と水質濁度の管理: 天然湖沼や水源保護区では水質汚濁(SS濃度の上昇)やアルカリ成分の溶出規制が厳しく、湿式モルタルの水中拡散は水質環境への悪影響が問題視されていました。
コンクリートキャンバスは、3次元繊維マトリックス内に特殊調合ドライコンクリート粉体を内包した柔軟なロール状複合材料です。散水または水との接触により水和反応を起こし、薄層の高強度コンクリート構造体を形成します。
| 技術特性 | 従来の石積み / 現場打ちコンクリート | コンクリートキャンバス | 湖沼横断部における適合優位性 |
| 運搬・搬入 | 大型アジテータ車・ポンプ車が必要 | ロール状供給、軽量、人力または小型クレーンで搬入可能 | 湖岸湿地や45°超の急勾配など作業ヤードがない現場に対応 |
| 水和・硬化 | 水流による洗脱・骨材分離が発生、水質汚濁大 | 水中または湿潤状態で直接硬化、セメント粉体が繊維内に保持 | 水中洗脱率が極めて低く、湖水の水質や透明度に影響を与えない |
| 変形追従性 | 剛性構造のため、不同沈下によりクラックが発生 | 硬化前は管溝や地形の起伏に柔軟に追従 | 配管周囲の凹凸に密着し、裏込め空洞やパイピング経路を排除 |
| 施工サイクル | 型枠組立、打設、養生に7〜14日を要する | 敷設・アンカー固定・散水のみ。1〜2日で設計強度に到達 | 水位低下期(渇水期)の施工ウィンドウを有効活用し工期を短縮 |
施工箇所: 地上から常水位面下に至る入水遷移区間(岸辺法面および水位変動帯)。
施工方法: 管溝の埋戻し・転圧完了後、勾配に沿ってコンクリートキャンバスを縦方向または横方向に敷設。常水位線から水深1.5〜2.0m以上の位置まで伸長。
重ね合わせとアンカー固定: 水流方向に対して隣接シートを100mm以上重ね合わせ、接合部にブチル系止水テープを充填した上でステンレス製ビスによる機械的留め付けを実施。法肩部および周辺端末はアンカー溝を掘削して埋設し、波浪によるめくれ上がりを防止。
施工箇所: 静水域のワンド、浅瀬、および沈設管路区間。
施工方法: 配管の沈設・砂埋戻し後、配管の防護・加重保護層としてコンクリートキャンバスを頂部に被覆。
防護効果: 水草の刈り取り作業、漁船の投錨、水流による砂礫の移動から配管外面の防食層を保護。また、乱流による底泥の流出と配管直下の空洞化を抑止。
施工箇所: 湖畔の急傾斜地に沿った管溝の縦断方向ガリー(洗掘溝)発生部。

施工方法: コンクリートキャンバスを用いて台形または円弧状の排水導流路を急速施工。地表流水を所定の排水口へ誘導し、降雨が管軸に沿って埋戻し土を侵食するのを遮断。
基礎面の整正: 敷設前に基底面の鋭利な石や植物の根を取り除き、法面を平滑に転圧。シート裏面の架空(浮き)による応力集中を防止。
アンカーピッチ: 水位変動帯の法面では1.0〜1.5mピッチの千鳥配置でグラウンドアンカーまたは異形鉄筋ピンを打設し、硬化前シートの密着性を確保。
水和・散水管理:
陸上部および乾燥面では、低圧スプレーにより複数回に分けて均一散水(未水和面への高圧洗浄機等の直噴は禁止)。
水中浸漬区間は追加の散水作業を不要とし、湖水の浸透を利用して自然硬化。ただし、初期硬化段階では流速による流出を防ぐ流況管理が必要。
端末部の納まり: 地盤との境界部全周に幅300mm×深さ300mmのアンカー溝(キー溝)を掘削・巻き込み、良質土で埋戻し転圧して湖水の回り込みによる裏込め侵食を防止。
施工性の向上: 作業員1チーム(4〜6名)あたり日当たり400〜800㎡の敷設が可能となり、従来の現場打ちコンクリート工法と比較して水際工事の工期を約60%短縮。
環境負荷低減と規制適合: 湿式モルタルの水中流出に伴う急激なpH上昇や浮遊物質(SS)の拡散を抑え、厳格な水資源保護区および湖沼生態系の環境基準をクリア。
ライフサイクルコストの低減: 耐薬品性(耐酸・耐アルカリ)、耐候性(抗紫外線)、耐凍結融解性に優れ、硬化後は高い曲げ・圧縮強度を発揮。長期沈水環境下でも劣化がなく、長距離パイプラインの数十年にわたる構造安全性を維持。