札幌市生活道路における震災後の「段差防止・掘削性確保」耐震復旧工事

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札幌市生活道路における震災後の「段差防止・掘削性確保」耐震復旧工事

2018年(平成30年)9月に発生したマグニチュード6.7の北海道胆振東部地震において、札幌市清田区里塚や美しが丘などの地域は、深刻な地盤災害に見舞われました。特に、山を削った地盤(切土)と人工的に土を盛った地盤(盛土)の境界である「切土・盛土境界部」に位置する生活道路では、激しい液状化や側方流動、不等沈降が発生し、路面が破砕して局所的に最大30cm以上の垂直段差が形成されました。

交通の早期復旧と、地下に埋設されたライフライン管路の将来的なメンテナンス性を両立させるため、北海道の技術陣は地盤工学会等と連携し、復旧工事に「土工格室(日本通称:ジオセル、またはハニカム構造立体補強材)」技術を大規模に導入しました。以下に、本工事のメカニズムと設計の詳細について解説します。

1. 核心的課題:切盛境界部の「段差」と地下埋設管のジレンマ

丘陵地等に道路を通す際、高い部分を削り(切土部)、低い部分を嵩上げ(盛土部)します。この両者の移行区間が「切土・盛土境界部」です。

  • 震災時の被災メカニズム: 切土部の原状土は万年単位の堆積を経て非常に強固であるのに対し、盛土部は人工的な置換土であり、締固めを行っていても一体性は切土部に及びません。強震時、盛土部が激しく震密・液状化して側方へ流動する一方、切土部は不動のままでした。この極端な「剛柔の不均等」が境界部に巨大な剪切力を生み、アスファルト路面を一瞬で破断させ、30cmもの垂直段差(落差)を発生させたのです。

  • 従来の復旧工法の行き詰まり: このような不等沈降を抑制するため、従来最も有効とされてきたのは、剛性の高い鉄筋コンクリート換填版(RC版)の設置でした。しかし、被災した路線は市街地の「生活道路(区道・市道)」であり、路盤下には水道管、ガス管、電力・通信管路などのライフラインが密集しています。剛性コンクリートで路盤を固めてしまうと、将来的に管路の漏水や更新工事が必要になった際、施工現場は「コンクリートが壊せない」という絶望的な状況に直面することになります。

2. 解決策:三維(3次元)ハニカム状ジオセルによる「柔構造版(フレキシブルスラブ)」の構築

この二者択一の難題に対し、北海道のエンジニアは「剛で剛を制する」思想を捨て、高密度ポリエチレン(HDPE)製のジオセルを利用し、高い曲げ剛性を持ちながらも高靭性を兼ね備えた「柔構造の路盤プレート」を構築するアプローチをとりました。

標準的な復旧断面構造は以下の通りです(下から上への順):

  1. 原状および埋戻し地盤: 薬液注入置換や層状締固めを再実施した被災基礎。

  2. 下層隔離: 上部の砕石が下層の軟弱土に沈み込むのを防ぐため、透水性不織布(ジオテキスタイル)を敷设。

  3. 核心補強層(ジオセル層): 展開高さ 15cm 〜 20cm の高強度ハニカム状ジオセルを広げ、格室内に現地の粒度調整砕石(M-25またはM-40規格)を充填・機械締固め。

  4. レベリング層: クッション砂または細粒砕石による 5cm の不陸整正。

  5. 表層: 密粒度アスファルトコンクリート舗装。

3. 2大技術的メリットの詳細

① 「立体拘束効果(コファインメント)」による30cmの致命的段差の緩和

ジオセルと一般的な平面状の土工格網(2次元ジオグリッド)との最大の違いは、その3次元立体構造にあります。

  • 物理的メカニズム: ジオセルを路盤に展開して砕石を充填すると、砕石粒子は独立した個々のハニカムセル内に完全にロックされます。車両荷重が切盛境界部に載荷された際、あるいは地震によって盛土部が再び微小沈降した際にも、砕石は側方へ逃げることができません。

  • 「スラブ効果(Slab Effect)」: 拘束された砕石層と高分子セル壁が協働することで、本来バラバラであるはずの砕石層が、さながら「ゴム製の靴底」のような柔軟なスラブ層へと変貌します。これにより一定の曲げ応力を負担できるようになり、30cmの急激な突発的段差を、数センチメートルの緩やかな傾斜へと分散・移行(希釈化)させます。再び地震が起きても路面が一瞬で破断することはなく、救急車両等の通行(緊急交通路)が確保されます。

② 地下ライフラインを殺さない優れた「再掘削性(メンテナンス性)」

これこそが、コンクリートではなくジオセルが選ばれた最大の技術的理由(日文:「維持管理性の向上」)です。

  • 掘削プロセス: ジオセルの内部に充填されているのは通常の天然砕石であるため、数年後に地下の水道管やガス管にトラブルが発生した場合、補修工班は小型バックホウや、最悪の場合は人力のシャベルでも容易に砕石を掘り出すことができます。

  • 切断と再構築: ハニカム状のポリエチレン壁に突き当たった際は、市販の電動レシプロソー(セーバーソー)や大型カッターナイフで容易に切断・撤去し、速やかに管路を露出させて補修作業に入ることができます。

  • シームレスな復旧: 管路の補修・埋戻し完了後は、掘削エリアに新しいジオセルを部分的に継ぎ足し、専用の接続ピン(Key)で既設のジオセルとロックした上で、再度砕石を充填して締め固めるだけで、100%の路盤承載力を復元できます。この「低侵襲(低負荷)な維持管理性」は、剛性のコンクリート置換工法では絶対に不可能な芸芸です。

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