I. 日本の養殖業におけるジオメンブレンの代表的な適用事例3選
1. 陸上型循環式養殖システム(RAS):
日本では沿岸部の土地が限られていることや環境規制が厳しいことから、近年、陸上養殖の開発が積極的に進められています。施工方法:金属メッシュ、竹・木材、またはモジュール式パネルを用いて、直径5〜30メートルの円形かつ高床式の枠組みを構築します。内部にはHDPE(高密度ポリエチレン)製の不透水性シート(通常厚さ0.5〜1.0mm)を張り巡らせ、魚やエビの高密度養殖に適した円形水槽を形成します。
対象魚種:バナメイエビ(*Litopenaeus vannamei*)、ウナギ、ヒラメなどの高付加価値種の養殖に広く利用されています。 2. ビニールハウスと池用ライナー:
日本の冬は寒冷であるため、ウナギの稚魚育成など多くの養殖作業はビニールハウス内で行う必要があります。
施工方法:太陽工業などの有力企業が、「ビニールハウス+遮水シート(ジオメンブレン)」を組み合わせた専用の養殖システムを開発しています。掘削した土池の底面に高強度の不透水性シートを敷設し、その上に保護用のクッション層を配置します。
地熱の利用:この設計は、水漏れを防ぐだけでなく、断熱材と組み合わせることで自然の地熱を効果的に保持し、冬季の水温維持に必要なエネルギーを大幅に削減します。
3. 海水用陸上種苗生産池および塩類・アルカリ土壌の転用:
沿岸の砂地や塩類・アルカリ集積の激しい農地を養殖場に転用する場合、単に池を掘削するだけでは、砂質土壌の高い透水性により保水できないことが多々あります。これに対し、日本の企業は耐海水性のあるEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)やHDPE製の遮水シートを設置することで、水漏れしやすい砂地を、密閉性の高い海水用種苗生産池へと迅速に転換しています。。
II. 主な技術的利点:なぜ日本の養殖業者はジオメンブレンを選ぶのか?
日本では食品の安全性(バイオセキュリティ)と精密な管理体制が重視されていますが、ジオメンブレン(遮水シート)の物理的特性は、これらの要件に最適です。
土壌由来の病原体や汚染物質の遮断(バイオセキュリティ):
従来の土池(つちいけ)の底には多量の汚泥が蓄積しやすく、そこが細菌、ウイルス、寄生虫卵の温床となります。一方、ジオメンブレンは水と土壌の間に完全な物理的障壁を形成します。その滑らかな表面は病原体の付着を防ぎ、地下水からの汚染物質の侵入を効果的に遮断すると同時に、養殖排水が周囲の農地の地下水へ浸透・汚染するのを防ぎます。
優れた水質管理と「廃棄物排出」設計:
日本の高密度養殖では、中央集約型の廃棄物排出システムが多用されています。ジオメンブレンを用いた池底は、熱溶着によって精密な円錐状(漏斗状)に成形することが可能です。水の循環により、魚やエビの排泄物や食べ残しの餌は、滑らかなシート表面を滑るように中央の排水口へと速やかに移動・排出されます。これにより、アンモニア態窒素や硫化水素などの毒素を発生させる廃棄物の分解を防ぐことができます。
曝気(ばっき)コストとメンテナンスサイクルの低減:
土池の底は、水中の溶存酸素を大量に吸収してしまいます。ジオメンブレンを使用して土壌を遮断することで、この酸素の損失を劇的に抑えることができます。さらに、土池では収穫後に殺菌目的で数週間から数ヶ月にわたる「天日干し」が必要となりますが、ジオメンブレン池であれば高圧洗浄機による清掃と消毒が可能なため、数日で次の生産サイクルを開始でき、休止期間を大幅に短縮できます。


