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I. 詳細な紹介:プロジェクトの概要とエコロジカル・デザイン
1. 基本設計コンセプト:「エコ・ミュージアム」
設計チーム(鹿島建設、箱根植木、ランドスケープ・プラス等の共同体制)は、本プロジェクトを単なる「憩いの公園」としてではなく、多摩川流域の生態系の延長線上にあるものとして位置づけました。この庭園は、多摩川の河川敷、国分寺崖線、等々力渓谷など、周辺地域の多様な地形や植生を再現しています。
2. 空間ゾーニング
総面積28,000平方メートルを超える敷地には、8,238平方メートル(標準的なサッカーコート1面分に相当)の緑地が整備されています。標高や動線に基づき、いくつかのテーマ別ゾーンに区分されています。
オープン・スカイ・プラザおよび階段広場(3~4階):開放的な眺望が楽しめるエリアです。大規模な階段や緩やかな傾斜に緑を配することで、建物の巨大なボリューム感が与える視覚的な圧迫感を和らげています。
菜園広場(3階):地域住民や子供たちが参加できる都市型農園です。サツマイモやダイコンなどの季節の野菜が栽培され、地域に根ざした食育活動を支えています。
メダカ池および野原広場(5階):綿密に設計されたビオトープです。池は等々力渓谷に見られる水生植物群落を再現しており、在来種のメダカが生息しています。
保全エリア(最上階):約20平方メートルの専用エリアを設け、多摩川流域の固有種であり絶滅危惧種でもある「カワラノギク」を栽培しています。この取り組みにより、都市の上空という環境で種の保全を実現しています。
II. 建設プロセスおよび中核技術の分析
屋上(特に商業施設の上)に、ダイナミックな水景や高木を配したこれほどの規模の生態系庭園を構築するには、耐荷重制限、防水処理、土壌流出防止、そして台風や地震への耐性といった極めて高いハードルを乗り越える必要があります。日本の建設チームは、以下のような厳密かつ現代的な建築・造園技術を駆使しました。
1. 基盤および基礎の構築(多層防水システム)
屋上の構造スラブ(床版)の完成後、直下の商業施設や映画館の安全を完全に確保するため、屋上基盤に多層保護システムが施されました。防水層:耐久性に優れた改質アスファルト防水やポリマー防水シートが採用されました。
防根層(防根シート):植栽において最も重要な工程です。植物の根がコンクリートのひび割れに侵入し、建物の構造的健全性を損なうのを防ぐため、専用の防根シートが設置されました。
排水・保水層:高密度ポリエチレン(HDPE)製の凹凸(ディンプル)構造を持つ排水板が敷設されました。大雨時には余剰水が溝(チャネル)を通って速やかに排水され、乾燥時には凹凸部分に蓄えられた水が毛細管現象によって植物へと供給されます。
2. 「ユニバーサル・ペデスタル」による乾式二重床工法(舗装エリア)
通路、休憩スペース、展望デッキなどの舗装エリア(タイルや石材を使用)には、全面的にユニバーサル・ペデスタル・システム(二重床工法)が採用されました。
施工プロセス:防水層の清掃 → ペデスタル基部の設置(防水層保護用の柔軟なパッド付き) → ネジ式支柱による水平・高さ調整(屋上の2%の排水勾配に対応) → 厚さ20mmの高強度屋外用セラミック舗装材をペデスタルに直接はめ込み固定。
施工の利点:この乾式工法では、セメントモルタルを必要としません。舗装材の間に設けられた2~3mmの隙間から雨水が垂直に防水層まで浸透・排水されるため、表面への水溜まりを防ぐと同時に、構造体への負荷を大幅に軽減できます。
3. 軽量土壌と地形の造成
天然の土壌のみを用いて屋上に起伏のある谷のような地形を造成しようとすると、建物の構造耐力を超える荷重がかかってしまうことになります。
超軽量人工土壌:屋上緑化用に設計された特殊な軽量土壌(パーライトやバーミキュライトなどの無機鉱物と少量の有機物を混合したもの)が施工に広く採用されました。この土壌は、乾燥時・飽和時のいずれにおいても通常の土壌の3分の1から2分の1程度の重量しかなく、優れた通気性を備えています。
EPS超軽量モジュールを用いたマウンド(築山)の造成:高低差のある景観用マウンドの内部をすべて土で埋めるのではなく、発泡ポリスチレン(EPS)製の軽量モジュールを積み上げてマウンドの概形を形成し、それをジオテキスタイル(土木用繊維シート)で包んだ上で、最後に30~50cmの軽量土壌で覆う工法がとられました。この手法により、局所的な構造負荷を最小限に抑えつつ、変化に富んだ豊かな地形を創出することができました。
4. 「廃棄物の再利用」による環境に配慮した施工
建設プロセスにおいて、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の原則が積極的に取り入れられました。
川石と基盤岩の再利用:屋上のせせらぎ、水路、擁壁に使用された玉石や景観石は、すべて本プロジェクトの基礎工事で掘削された多摩川の天然石が活用されました。
流木による景観づくり:多摩川の河川敷で収集された天然の流木が、メダカ池周辺の倒木を模した景観要素や昆虫の生息場所として活用されました。
5. 安全な施工
耐風・耐震性日本では台風や地震が頻繁に発生するため、高層建築物の屋上における耐風性と耐震性の確保が最優先事項とされました。
樹木の固定(耐風工法):屋上に植栽される低木や小高木は、地上部のように地面へ直接根を張って固定することができません。そのため、地中に隠れる形の樹木固定システムが採用されました。根鉢(根の塊)部分に設置したスチールメッシュグリッドを、屋上構造体に埋め込まれた固定金具や重力式基礎に直接固定する仕組みです。
これにより、目に見える支柱などを設置する必要がなくなり、景観の美しさを保ちつつ、猛烈な台風の際にも樹木が倒れたり吹き飛ばされたりするのを防ぐことが可能になりました。
舗装材(ペイバー)のずれ・浮き上がり防止:敷地の境界や強風にさらされるエリアに設置される舗装材については、支持脚(ペデスタル)システムにロック機構を備えたものを採用しました。これにより、強風による負圧(吸い上げ力)で舗装材が外れたり、ひっくり返ったりするのを防いでいます。
III. 要約と示唆
二子玉川ライズの屋上庭園が成功を収めた要因は、その美しく牧歌的な景観だけでなく、プロジェクトの全工程を通じて実践された科学的な計画手法にあります。
多者間連携:建築家、ランドスケープデザイナー、植物学者、そして施工業者(箱根植木など)が初期段階から深く関与しました。
これにより、防水や耐荷重といった技術的要件と、植物群落の存続という生態学的なニーズを完璧に融合させることが可能となりました。
低維持管理型の設計(レフュジア・システム):建設チームは、環境再生型の革新的な緑化システムを採用しました。
東京の気候に高度に適応した多摩川流域の在来種を活用することで、完成後の集中的な手入れや施肥を不要にし、真の持続可能性を実現しました。








