NEXCO(西日本高速道路株式会社など)は、本プロジェクトにおいてジオテキスタイルを用いた補強土技術を広範に採用しました。構造面では、盛土材を層状に積み重ねる工法がとられ、各土層(通常約30cm厚)の上に高性能ジオテキスタイルを敷設するとともに、路体端部ではジオテキスタイルを折り返して盛土材を包み込むことで、高度に一体化された補強土構造体を形成しました。路体の法面(のりめん)外側では、ジオテキスタイルの目地を通して植生が施されました。
性能面については、土木学会による追跡調査で確認された通り、10年以上にわたるモニタリングや数々の地震への暴露を経ても、ジオテキスタイルの損傷や路体法面の崩れ・変形は一切認められませんでした。この構造設計は、高い耐震柔軟性を備えるとともに、周囲の山岳生態系とも調和しています。
NEXCOは、高速道路の路体(路盤下層の盛土部分)建設における主要な課題を効果的に解決できるとして、従来のコンクリート製擁壁に代わり、ジオシンセティックス(主に高強度ジオグリッドやジオテキスタイル)を大規模に採用しています。その主な理由は以下の通りです。
ジオシンセティックスを盛土内に水平に敷設すると、交通荷重によって盛土材が締め固められ、土粒子がジオグリッドの網目(開口部)にかみ合ったり、ジオテキスタイル表面との間に強力な摩擦抵抗が生じたりします。この「引抜き抵抗」が路体土の側方変形を効果的に拘束し、緩い盛土材を引張力に抵抗できる複合構造体へと変化させます。
日本では地震動を2つのレベルに分類しており、「レベル2」はその地域で発生しうる最大級の破壊力を持つ地震を指します。従来の剛性の高いコンクリート製擁壁は、激しい地震の際に脆性破壊や転倒を起こしやすい傾向があります。対照的に、NEXCOのジオシンセティックス補強路体は柔軟な構造であり、軽微かつ均一な変形を許容することで地震エネルギーを吸収します。過去の大地震(東日本大震災など)において、これらの構造体は大規模な補修をほとんど必要とせずに供用を再開できることが実証されています。
山間部での高速道路建設では、用地の制約や急峻な地形により、緩やかな法面勾配を確保できないという課題に直面することが多々あります。ジオシンセティックスによる補強を活用することで、NEXCOは垂直(90度)またはそれに近い法面を持つ、自立性の高い路体盛土を構築でき、大規模なコンクリート擁壁を設ける必要がなくなります。
NEXCOの代表的な工法として、「全面緑化型ジオシンセティック補強土壁」が挙げられます。その標準的な断面構造は、外側から内側へ、また下から上へと、高精度な層状の構成をとっています。
壁面保護工:端部における盛土材の侵食防止と景観への配慮を両立させるため、NEXCOでは機械的に曲げ加工を施した鋼製ワイヤーメッシュ(格子状の補強材)を法面に設置します。その内側には土粒子の流出を防ぐ不織布(ジオテキスタイル)を配置し、表面には緑化基材を吹き付ける処理(緑化)を施します。
折り返し補強層:構造体内部の高強度織布ジオテキスタイル(またはジオグリッド)は、盛土の端部で上方に折り返され、端部の土をしっかりと包み込む(「包み込み」構造)ように配置された後、後方へ延ばされて定着されます。各盛土層の厚さは約30cmに厳密に管理され、順次積み上げられていきます。
三次元コア排水網:NEXCOの仕様では、水こそが補強土にとって最大の敵であると位置づけています。補強土塊の内部に水が滞留すると、土の摩擦力が著しく低下し、壁面の膨らみや構造的な崩壊を招く恐れがあるためです。そのため、補強土塊の最深部(自然斜面との境界部)には鉛直排水溝(暗渠)を設置するとともに、ジオテキスタイル層の間に一定間隔で透水性の高いシート状排水材(排水マット)を挿入し、浸透水を路体外へ迅速に排出する仕組みを設けています。